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【準決勝❶】長曽根が逆転逃げ切り、日本一に王手

2026.09.28 |更新日:2026.09.28 2026リポート
【準決勝❶】長曽根が逆転逃げ切り、日本一に王手

 2026年の日本一を決する夢舞台も、いよいよ佳境。メダルの色を懸けた準決勝の第1試合は、8度優勝を誇る“常勝軍団”と、120km投手2枚と何人もの大砲を抱える東京No.1チームとの戦い。長曽根ストロングス(大阪)が船橋フェニックス(東京第1)を下し、銀メダル以上を確定した。試合後、船橋ナインには銅メダルが贈られた。

(写真=福地和男、大久保克哉)

■準決勝

◇8月12日◇坊っちゃんスタジアム
▽第1試合

3回表裏が分水嶺に

[東京第1]2年ぶり3回目
船橋フェニックス
 00200=2
 00421x=7
長曽根ストロングス
[前年優勝・大阪]2年連続19回目

【船】森下、大野、森下、岡本-石黒
【長】山瀬、髙見、山瀬-岡林
二塁打/森下、大野(船)、吉見、髙見(長)

【評】3回表、船橋フェニックスは八番の高橋亮馬が中前打を放ち、若月柊哉がバントで送ると、一番・森下貴斗と大野凌駕が連続二塁打を放って2点を先取した。しかしその裏、長曽根ストロングスは先頭の八番・辻井恭悟が四球を選ぶと、内野フライ落球で走者が入れ替わった後、一番の吉見憲眞主将から山田蒼、山瀬晴の3連打で同点に追いつき、さらに敵失と四球、茂友悠人の適時打で2点を勝ち越した。長曽根は4回に四球と吉見主将の左中間二塁打に続き、山瀬が2ランスクイズを決め2点、5回にも日本松龍の右前打と茂友の内野安打、5年生の髙見銀志郎の中越え二塁打で7対2に。ここで制限時間の90分に達し、次打者の1アウトでゲームセットとなり、長曽根が船橋を下して決勝進出を決めた。

 

―On-the-ground report―

自戒を込めた指揮官の言葉

(取材&文=鈴木秀樹)

 王者が見事な逆転劇で、3度目の連覇にまた一歩、近づいた。

 3回表、先制は船橋フェニックスだった。
 最も警戒すべき大砲2人、一番・森下貴斗と二番・大野凌駕に連続の適時二塁打を打たれての2点だ。しかも、八番・高橋亮馬の安打に始まり、下位打線で得点圏に走者を進められての失点。長曽根ストロングスにとっては、決していい流れではない。
 しかし、一塁側ベンチに慌てる様子はなかった。
「向こうの一番と二番には、(ホームランを)放り込まれても仕方ないくらいに考えとったんです」
 熊田耐樹監督が振り返る。
「もともと完封できる相手やないと思うてました。先制されましたが、あそこはむしろ、よく2点に抑えてくれた、いう感じです」
 先制は許したが、すべては想定内だったというのだ。

長曽根は山瀬㊤が落ち着いた投球で先発に抑えにフル回転。2点を追う3回裏、辻井の四球㊦から反撃が始まった


 そして、直後の3回裏だった。
 前日の準々決勝に続き、調子良く投げていた船橋先発の森下を相手に、先頭の八番・辻井恭悟が粘りに粘って四球を選んだ。トータル12球。気迫すら感じさせる、辻井のファインプレーだった。
 次打者、山田雄大の内野フライを船橋が捕球ミス。走者が入れ替わるにとどまったが、長曽根にとっては悪くない流れだ。その山田が、けん制悪送球で一気に三塁を陥れると、直後に一番・吉見憲眞主将が放った打球は、センターの前にポトリと落ちる適時打となった。
 さらに山田蒼、山瀬晴がこれに続く。3連打で同点に追いつくと、内野ゴロ失策で勝ち越し。さらに二死後、打者一巡となる茂友悠人の安打で1点を加え、リードは2点に広がった。

3回裏、けん制悪送球で一走の山田雄大が一気に三塁へ㊤。そして一番・吉見主将の適時打㊦でまず1点

1点を返してなお、二番・山田蒼の右前打㊤で一死一、三塁に

三番・山瀬は中前に同点打㊤。さらに二死満塁から七番・茂友の適時打で4対2に


 こうして長曽根は見事に、試合の主導権を奪ってみせたのだった。
 4回表には、一死後に先発の山瀬から5年生の髙見銀志郎に投手交代。イニング途中、走者がいない状態でのスイッチが長曽根の基本だ。髙見も落ち着いた投球をみせ、好投リレーで船橋の攻撃を三者凡退に斬ってとった。
「逆転されたことで、相手の攻撃も少し粗くなる。それもこちらの想定通りでした」(熊田監督)
 試合はすっかり長曽根ペース。その裏には一死二、三塁から、山瀬が2ランスクイズを決める。5回に連打で1点を奪ったところで、時間制限による打ち切りとなった。
 長曽根は3回の逆転でつかんだ試合の流れを相手に渡すことなく、勝ち切ったのだった。

4回表途中から登板した5年生・髙見㊤も力投。4回裏には山瀬のスクイズで三走の山田雄大に続き、二走の吉見主将も生還㊦

「個人の力でいえば、船橋さんはすごい選手ばかり。ただ、野球はそれだけやないからね」
 快勝の指揮官は続けて、そうつぶやいた。
 その後に続く言葉を探すなら、必要なのは「まとまり」であり「組織力」、そして「作戦実行力」──ということになるのだろう。
 熊田監督のいう“長曽根魂”である。
 図らずも、打者10人で逆転した3回に長曽根打線が放った安打がすべて単打だったのは、象徴的ですらある。
 ただ、指揮官のこの言葉は、単にこの試合で“組織力の長曽根が、個人の力に頼る船橋を破った”とだけ意味しているわけではなさそうだ。
「野球はそれ(個人の力)だけやない」
 この言葉、対戦相手を評してというよりは、自分に、あるいは自チームに言い聞かせるようなつぶやきにも聞こえたのだ。

「力はない」と言われながら、全国制覇を果たした昨年のチームに比べ、個々の力量では上、といわれてきた今年の長曽根。それでも、春を迎える前には、指揮官から「去年のチームは力はなかったが“長曽根魂”で全国をとった。今年のチームには“魂”が足りない」という言葉を何度も耳にした。
 そこから厳しい練習と、多くの試合経験を積むことで、徐々に、その“魂”が培われてきたのだろう。
 この日の指揮官の言葉は、全員が気持ちをひとつに戦うことの重要性を、あらためて選手たちに言い聞かせる意味での「それだけやない」であり、指揮を執る自らの姿勢を確認する意味での「それだけやない」でもあったのではないか。
 いずれにせよ、勝ち戦の振り返りだけではなく、“ウチはこうして戦うのだ”という、決意表明にも聞こえる一言ではあった。

 貫禄の試合運びで今大会、最も警戒していた難敵に快勝し、残すは決勝のみ。前人未到、9度目の頂まで、あと一歩だ。

 

―Team Inside Story―
5戦9発が象徴。突き抜けた能力と進化、いかんなく“銅”

(取材&文=大久保克哉)


第3位

ふなばし
船橋フェニックス
[東京都]
出場=2年ぶり3回目

【2026戦いの軌跡】
1回戦〇5対2美浜(和歌山)
2回戦〇13対1浦添(沖縄)
3回戦〇10対1松山N(愛媛)
準々決〇3対2北名古屋(愛知)
準決勝●2対7長曽根(大阪)

 なんてことのない小フライを弾いてポトリ。アウトは増やしたが、ほんの小さな綻びから“勝ち運”が逃げていったのかもしれない。まして相手は、孤高のV記録を「8」に更新している前年度の王者だ。つけ入る隙を逃すはずがなかった。

“らしい”負け方

 船橋フェニックスが、みるみる深みにはまったのは準決勝の3回。2点を先取した直後の裏の守りだった。

準決勝の2回表、四番・石黒主将が両軍通じて初ヒット㊤。続く3回表は八番・高橋亮馬が一死から中前打㊦

3回表、一死一塁から森下㊤と大野㊦の連続二塁打で2点を先制。ここまではいつもの船橋だったが…

 2点のリードで守りに入ったわけではないだろうが、ポロリに続いて悪送球あり、捕球ミスあり。いつもなら美技にするようなフライも、適時打に。救援した投手は明らかに球が走らず、力のない打球が内外野の間に落ちてまた失点…。


 長い守りを終えたときには、2対4と試合がひっくり返っていた。すると以降は、自慢の打線から快音が消えてヒット1本に。逆転した前年王者のほうは、守って隙なし。攻めてはボール球を確実に見送りつつの大技小技に、足技も絡めて粛々とリードを広げていった。
 悪循環を抜け出せない。すっかり影をひそめていたが、それも今年の船橋のひとつの顔だった。6年生の代を率いて5年目の岡本隼人監督も、想定外ではなかったという。「よくあるというか、ウチらしい負け方でしたね。ここぞでミスとか、不運とか誤算もあってベンチも一手二手、後手に…」

4回裏、右翼から三塁の守備に回っていた髙橋亮がファウルフライを好捕㊤も、流れは変わらず

 意外な脆さはウィークポイントである。もともと、粗さや穴がないわけでもない。しかし、それらを埋めて余りあるほど、さらには愛しくなるほど、このチームは天真爛漫で、突き抜けた強さも同居していた。


 何より、野球と真剣勝負を楽しんでいる。都会っ子ゆえか、小学生離れした能力とサイズ感のせいか、クールやそれを装う側面もあるが、プレーは常に全力。輪をかけて明るい指揮官は各々の理解者で、外圧には自ら盾となり、ラフプレーと不正義を容赦しない気骨の男だ。


 こんなチームは初めて見るし、何かやってくれそう――伝統の夏の夢舞台でも、人々の嗅覚を大いに刺激したのだろう。試合をするほどに、スタンドのギャラリーやファンを増やしていった。

“規格外”のコンビに加え

 今大会で明らかに硬さが見られたのは、与四球やミス絡みで失点した1回戦の1回表のみ。直後に四番・石黒信匡主将の一打で同点として以降は、世代屈指のタレント軍団がいかんなく、その力を見せつけていった。

大野㊤㊧と森下㊤㊨の怪物コンビは投打だけではなく、外野守備と走塁でもチームに貢献。七番・佐々木㊦は大会2本塁打をマーク

 

 双璧のツインタワー、森下貴斗と大野凌駕(「2026注目戦士❿⓫」➡こちら)は、競うようにアーチを量産。そこに七番バッターの佐々木翔瑛も割って入り、2回戦は計5本塁打で大勝した。続く3回戦は、主将のバットから決定打が生まれ、準々決勝では2021年準Vの北名古屋ドリームス(愛知)に競り勝った。
 2年ぶり3回目の全国で“台風の目”に。双璧のコンビは、やはり規格外だった。ただし、最大の激戦区・東京都の王者は、2人だけのチームではない。1回戦で6年生12人全員を起用した岡本監督は、「決勝まで6連戦の想定」を口にした。

「浅沼(光貴=㊤中央)はベースコーチのスペシャリスト」と岡本監督。倉持㊦は全力プレーの鑑でもあった

 怪物コンビの後を打つ三番・倉持怜央は、機に応じてスクイズを決めたり、四球を選んだり。五番・岡本悠人の一打がチームを救うことがあれば、九番・若月柊哉の1本から得点につながるイニングもあった。
 投手陣では4番手、5番手クラスだった小池拓海が台頭。1回戦の最終回を締めると、2回戦、3回戦と先発してゲームメイクした。大きなエンジンで50mを6秒7で駆け、マウンドでは120㎞前後を投じる森下と大野が、連日の炎天下でもストールしなかったのは、岡本(=㊦写真)と石黒主将が場面を選ばずに登板し、アウトを稼いだおかげもあったに違いない。


 2年前の先輩たちがつまずいた「3回戦」も難なく超え、気付けば舞台はメダル圏内同士のセミファイナル。そこで待ち受けていたのは、それまでよりワンランク上、いや全国トップの手練れの試合巧者だった。
「ウチは7点、8点取りにいくチームなので。その得点がなかなかできないとか、森下と大野がそろって出塁できないのも珍しいんですけど、めちゃくちゃ研究されて、マークされてましたね」(岡本監督)


 コースへの投げ分けや微細な出し入れは当然。投球のテンポとフォームにも幅があり、守る7人の立ち位置は打者に応じて変動。打席の船橋の選手はある意味、常に9人を相手に戦っていた。

日本で4番目に長い夏

「特に3回戦までは、相手のマークの上をいく打撃ができたんですけど、きょうはいろいろと狂わされてましたね。ウチの良さを出せなかったのは、向こうがうまくやったということでもある」
 潔く脱帽した岡本監督は、こうも言った。
「じゃあ、10回やって10回負けるかといったら、まったくそんな感じはしませんし、ハマればぜんぜん、ウチの試合になる」


 負け惜しみではない。貫いてきたスタイルやスタンダードが捻じ曲がるような、ショッキングな内容ではなかった。ただし、フィナーレはおそらく、当人たちも予期せぬものだった。
 6回表の攻撃に入れぬまま、90分超過でゲームセット。センターでその瞬間を迎えた大野は泣き崩れ、審判に促されてどうにか試合後の挨拶へ。若月や二塁手の高橋冴優ら6年生の多くがまた涙。30番も直後は目が潤み、声が震えた。
「…この子たちが泣いているのでちょっとアレですけど…ボク自身も負けるつもりも負ける気もホントにしてなくて、普通に全国優勝もやっちゃうんだろうなって…それが負けてみて…うん、楽しかった。それが真っ先にきますね」(岡本監督)


 東京都を制しても、駆け寄っての抱擁もなく、淡々としていた面々。それが嘘のように、ストレートな感情を露に。一番のムードメーカーでもある大野は、幼子のように声をあげて泣いていた。
「優勝旗を東京に初めて持ち帰りたかったです。でもまぁ、毎日楽しかったです」と、佐々木は泣かず。ミーティングで涙がこぼれたという森下は「長曽根は戦術とかがうまくて、こっちが全力を出し切れなかった感じがある。それが悔しかった」と後日、振り返っている。


  

 涙の意味は、きっとそれぞれ。でも全員に共通するのは、夢舞台を思い切り謳歌したこと。全国8333チームの中で4番目に長い夏を、彼らは存分に堪能した。一部始終を目の当たりにした、岡田咲玖ら5年生11人は胸に期するものがあったことだろう。
「中学でも高校でも、最後の夏は必ず来る。小学生の夏が、全国のラスト4チームになるまで続いたのは素晴らしい」(岡本監督)
 父親監督でもある指揮官の去就は未定で、一粒種の愛息の進路次第とのこと。息子の悠人は嗚咽を漏らしつつ、どうにか言葉をつないだ。
「最後まで自分の野球はできたので良かった…経験をこれからの野球人生にしっかり生かしていきたい…」


 タレント軍を率いる父親の下でプレーするのは、人が思う以上に辛苦もあったはず。思えば1回戦での先発登板に始まり、準々決勝では最初のアウト(三ゴロ)に、逆転されたイニングの3アウト目(三ゴロ)、そしてラストイニングのマウンドと、節目や難局には、この背番号1がいた。小さく頷きながら「楽しかった」と漏らした岡本からは、父へのメッセージを託された。
「生まれてきてからこれまで、野球をしっかりと教えてきてくれて、こんな経験をさせてくれて、ありがとう!」
 ほんの何秒か。伝え聞いた30番は目を閉じてから、半ば父親の顔になって喋りだした。
「世の中のほとんどの人が、全国大会なんて縁がないじゃないですか。ボク自身も何ひとつ縁がなくて、それが大人になってこんな舞台で、こんなに楽しい経験ができるなんてね…」


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